お店から「今月はフリー限定で◯,◯◯◯円オフのキャンペーンをやります」とアナウンスが来た日。売上が伸びる話のはずなのに、指名で来てくれているお客様の顔が先に浮かんで、素直に喜べなかった経験はないでしょうか。
指名しないほうが安い。つまり、自分を指名する人だけが余分に払っているという形が、お店の公式ページに出てしまう。そう感じたとき、何をすればいいのか。
この記事では、フリー限定割引が始まったときに本当は何が起きているのかを分解したうえで、値引きで対抗せずに本指名を守る方法を、告知の文面と枠の押さえ方までまとめます。
結論|フリー限定割引が奪うのは売上ではなく「指名する理由」
先に結論からお伝えします。フリー限定割引への対応でやるべきことは、値引きで並ぶことではありません。指名でしか手に入らないものを、割引の告知と同じ場所に置くことです。
フリー限定割引は、お客様の頭の中で指名料を「サービスの対価」から「割引を受け取らないために払う差額」に書き換えます。金額は1円も変わっていないのに、払う理由だけが消えます。
ここで自分も値引きを始めると、同じ土俵の上で「安いほう」を競うことになります。勝てません。お店の割引はお店の原価で出ていますが、キャストの割引は自分の取り分から出るからです。
やることは逆で、価格では比較できないもの(時間の確保・前回の続き・相手を選べること)を、はっきり見える形にすることです。
フリー限定割引で本当に起きていること|3つの層に分けて見る
「フリー割が始まってから本指名が減った」と感じるとき、減っているように見える中身は層ごとに違います。ここを混ぜたまま対策すると、いちばん効かない場所に手を打つことになります。
| 層 | フリー割の影響 | 実際に起きること |
|---|---|---|
| ① もともと指名しない新規 | ほぼ影響なし(むしろ増える) | 来店の入口が広がる。指名を取るチャンスが増える |
| ② 指名しようか迷っていた人 | 最も直接的に流れる | 「今回はフリーでいいか」に倒れる。初回指名の芽が消える |
| ③ 本指名さん | 指名替えはしない | 来店そのものを後ろにずらす |
①は損失ではなく入口が広がっている
指名なしで来るお客様がもともと一定数いるなら、フリー割はその層の来店を増やします。**割引で来た人と接客で会うのはキャストなので、入口が広がること自体は不利ではありません。**回収の仕方は後半の「割引期間が終わる前にやること」で扱います。
②がいちばん静かに削られる
指名を検討していた人は、もともと「指名料のぶんの価値があるか」を判断しようとしていた層です。そこに「指名しなければ安い」が提示されると、判断そのものが不要になって比較が終わります。
この層が消えても、キャスト側の記録には何も残りません。問い合わせが来ないので、取りこぼしとして数えられない取りこぼしです。指名種別の内訳がそもそも分からない状態だと、①の増加が②の減少を打ち消して、全体の本数だけ見ると「特に変わっていない」に見えます。指名種別の考え方と記録の仕方は本指名・初回指名・フリーの違いと管理にまとめています。
③は「指名を外される」のではなく「来店が後ろにずれる」
ここが最も誤解されやすい部分です。本指名さんは数千円の差でキャストを替えません。替えないかわりに、「割引期間中に指名で入るのは損だから、終わってから行こう」と考えます。
つまり起きているのは指名替えではなく、来店の先送りです。ところがキャスト側から見える景色は同じで、「その月の本指名の本数が減った」としか見えません。
先送りだと分かっていれば、打つ手は「値引き」ではなく「先に枠を押さえてもらうこと」になります。原因を取り違えると、必要のない自腹の特典をつけて、本数は戻らないまま取り分だけ減ります。
値引きで対抗してはいけない3つの理由
②や③を取り戻そうとして、自分の側で「指名の方には+◯分」「指名の方は◯◯円分サービス」を出したくなります。これを期間中の反射でやると、期間が終わったあとに効いてきます。
① 下げているのは店の価格ではなく自分の取り分
指名料はお店が設定するもので、キャストの一存では下げられません。下げられるのは自分のバックか、自腹で用意する特典だけです。**お店の割引は集客投資として原価に織り込まれていますが、キャストの割引はその日の手取りからそのまま引かれます。**同じ「割引」に見えて、出どころがまったく違います。
② 参照価格が書き換わり、元に戻せなくなる
一度「特典がついている自分」を提示すると、お客様の中の基準がそこに移ります。**割引がない通常の自分が、あとから割高に見えるようになります。**これは一方向にしか動きません。特典を「値引き」ではなく別の軸で出す考え方は「ご新規/仲良しさん/本指名」の区分の決め方で詳しく扱っています。
③ 店の割引は必ず終わる。自分の割引の終わり方が難しくなる
キャンペーンには期限があります。期間が終わればお店の価格は自動的に戻りますが、**キャストが自分で出した特典を同じタイミングで止めると、お客様には「値上げ」として届きます。**お店の割引終了は告知されますが、キャストの特典終了は誰も告知してくれません。
指名でしか手に入らない3つのもの|価格と同じ土俵に乗らない要素
では何を提示するのか。フリーと指名の差は、実は金額よりも先に確実性の差です。
A. 時間を先に確保できる
フリーは、来店した時点で手が空いているキャストに割り当てられます。つまり**「何時に、誰と」が当日まで決まりません。**指名予約は、先に枠を押さえられます。
遠方から来る方、仕事の合間に来る方、当日に予定を動かせない方にとって、これは割引額より重い条件です。割引は数千円ですが、時間が合わなければ来店そのものが成立しません。
B. 前回の続きから始められる
前回の内容、苦手なこと、話した近況。これが引き継がれるかどうかは、指名とフリーの決定的な差です。ただし**この差は、キャスト側に記録がある場合にしか発生しません。**記憶に頼っていると、指名で来ても「はじめまして」と同じ会話から始まります。そのとき、お客様が払った指名料は何にも変換されていません。
記録の残し方は顧客カルテの作り方とお客様ノートのデジタル化にまとめています。
C. 相手を選べる
フリーは店が割り当てます。誰に当たるかは分かりません。**指名は「外れがない」ことへの支払いでもあります。**この点は言葉にして書くと角が立つので、告知では書きません。ただし自分が理解しておくと、Aの言い換え(「この時間はご指名で確保できます」)に自然に落とし込めます。
**A と C は価格ではなく確実性の話なので、割引と直接比較されません。**対抗するなら、この2つを前に出します。
告知の書き方|割引を否定しないで、指名の側だけを足す
いちばんやってはいけないのは、お店の施策を否定する告知です。お客様は板挟みになりますし、お店との関係にも直接ひびきます。
原則はひとつです。「フリーは損」を書かない。「指名だと、これができます」だけを書く。
型① 併記型|割引に乗ったうえで、指名の条件を足す
今月は店舗のフリー限定キャンペーン期間です🌸
ご指名でのご予約は、お時間を先にお取りできます。
「この日のこの時間に行きたい」が決まっている方は、
姫予約からご希望をお送りください◯
割引に触れつつ、否定は一切していません。足しているのは時間の確保(Aの要素)だけです。
型② 時間軸型|混む時間だけを名指しする
キャンペーン中は◯時〜◯時が埋まりやすくなっています。
その時間をご希望の方は、前日までにご連絡いただけると確実です🕊
これは「指名してください」と一度も言っていませんが、**先に動く理由を渡しています。**割引と競合しないので、キャンペーン期間中でも出せます。
型③ 記録型|本指名さんにだけ届けばいい
いつも来てくださっている方へ。
前回のお話の続き、ちゃんと控えてあります。
次にお会いするときはそこから始めますね◯
これは価格の話を一切していません。③の層(来店を後ろにずらそうとしている本指名さん)にだけ効くように書かれています。
💡 お店のキャンペーンと自分の出勤を1投稿でつなぐ書き方は店舗イベント × 個人出勤の連動投稿テンプレに型があります。
期間中の枠の組み方|「暇になる」ではなく「他人の予約で埋まる」
ここが実務上いちばん効きます。
フリー限定割引の期間中、**フリーの来店は増えます。**フリーはその場で手の空いているキャストに割り当てられるので、自分の待機時間が店側の判断で埋まりやすくなります。
つまり期間中に起きるのは「指名が減って暇になる」ではありません。「指名の枠を先に押さえていないと、そこにフリーが入って物理的に受けられなくなる」です。予約客とフリー客の枠がぶつかったときのさばき方は予約客とフリー客の枠が競合した時の優先案内術にまとめています。
やることは3ステップ
Step 1: キャンペーンが発表された時点で、期間中の出勤を先に確定する
期間が始まってからでは遅くなります。告知の材料がないと、お客様は動けません。
Step 2: 次の来店が期間中に来そうな本指名さんへ、先に声をかける
ここで価格の話をする必要はまったくありません。伝えるのは1つだけです。
◯月の店舗キャンペーン期間は、当日のご案内が埋まりやすくなります。
ご希望のお日にちがあれば、先にお知らせください🌙
**「割引があるから来て」ではなく「埋まるから先に」**です。前者は値引きの話に巻き込まれますが、後者は事実の共有なので角が立ちません。誰に声をかけるかの洗い出しは、来店間隔をたどる方法が使えます(休眠客の掘り起こしと同じ考え方です)。
Step 3: 期間中の空き枠を、当日ではなく前日までに出す
当日の空きはフリーで埋まります。指名で埋めたい枠は、フリーが動き出す前の時間帯に告知しておくのが唯一の打ち手です。
割引期間が終わる前にやること|フリーで来た人の回収
①の層(フリー割で来た新規)を次につなげる窓口は、割引が終わる前の1回しかありません。
やってはいけないのは「次回からは指名でお願いします」です。お客様の側から見ると、これは値上げの通告です。次に来る理由にはなりません。
代わりに渡すのは、続きの提示です。
今日はありがとうございました。
◯◯のお話、次までに調べておきますね。
次回もし私で良ければ、そのときはお時間を先にお取りできます◯
ここで効いているのはAとBです。「安くなる」ではなく「取れる・続く」を提示しています。初回のお客様向けの設計そのものは「はじめまして価格」の作り方、経路ごとの特典の伝え分けは姫予約特典の作り方と、予約経路別割引の伝え方が参考になります。
やってはいけない4つのこと
- お店の施策を公の場で批判する — SNSに書いた時点で、お客様は「割引を使うと嫌がられる」と受け取ります。割引を使った人が来なくなります
- 自腹で割引に並ぶ — 出どころが自分の取り分なので消耗し、しかも参照価格が書き換わって元に戻せません
- キャンペーン期間だけ告知を止める — 「どうせフリーに流れるから」と告知を減らすと、③の層の先送りが確定します。期間中こそ、時間の確保だけを言い続ける時期です
- フリーで来た方に指名を「お願い」する — お願いは相手の行動理由になりません。渡すのは理由(続き・時間)であって、お願いではありません
効果の測り方|本数ではなく「間隔」で見る
キャンペーンの影響を月の本指名の本数だけで見ると、①の増加と②③の減少が打ち消し合って、何も分かりません。見るのは次の3つです。
| 指標 | 見方 | なぜこれを見るか |
|---|---|---|
| 本指名さんの来店間隔 | 普段より伸びていないか | ③の「先送り」はここにしか出ない。本数では見えない |
| フリー→2回目の指名転換率 | 期間中に来た新規が次に指名で来たか | ①を回収できたかどうかの唯一の指標 |
| 期間の前後4週の比較 | 期間中だけを見ない | 先送りされた来店は期間後に戻ってくる。期間中だけ見ると過小評価になる |
とくに1つ目です。「今月は本指名が◯本減った」ではなく「いつもは3週間おきに来ていた方が、今回は5週間空いた」を検出できるかどうかで、打つ手が変わります。前者なら値引きの誘惑に負けますが、後者なら「先に枠を押さえてもらう」という正しい処方に行き着きます。
管理方法の比較|キャンペーンの影響を追えるか
| 管理方法 | 指名種別を記録できるか | 来店間隔が見えるか | 予約枠を先に押さえられるか |
|---|---|---|---|
| 頭の中・記憶 | × | × | × |
| 紙の手帳・メモ帳アプリ | △(書けるが集計できない) | △(めくって数える) | △(書けるが空きが見えない) |
| カレンダーアプリ | △ | × | ×(「まだ確定していない希望」を置く場所がない) |
| スプレッドシート | ○ | ○(式を組めば) | △(空き時間が形で見えない) |
| P-Book | ○ | ○ | ○ |
右の2列が実質的な差です。**来店間隔が見えないと③の先送りに気づけず、枠を先に押さえられないと期間中にフリーで埋まります。**カレンダーアプリは一見向いていそうですが、「まだ確定していない希望」と確定済みの予約が同じ見た目で並ぶため、先に押さえる運用と相性がよくありません。
よくある質問(FAQ)
Q. フリー限定割引に、キャストが反対を伝えてもいいですか?
A. 伝えるならお店に個別に、が原則です。お客様の目に触れる場所(SNS・写メ日記・オキニトーク)に出すと、割引を使ったお客様が「歓迎されていない」と受け取ります。実際に減るのは割引利用ではなく来店そのものです。
Q. 期間中、自分でも「指名の方に+10分」などを出すべきですか?
A. 期間中の反射で出すのはおすすめしません。出どころが自分の取り分であることに加えて、期間終了と同時に止めると値上げとして届くためです。出すなら期間と関係なく続けられる形(順番の優先など、原価が発生しないもの)にしてください。
Q. 本指名さんから「割引のときに行ったほうがいいの?」と聞かれたら何と答えますか?
A. 「時間が選べるほうを優先してください」と答えるのが自然です。割引を否定せず、判断軸をこちらから提示できます。金額の比較を続けさせると、次回以降も価格で判断されるようになります。
Q. フリーで来たお客様を、次から指名にしてもらうにはどうすればいいですか?
A. 接客中に「次につながる具体的な続き」を1つ作り、帰り際に言葉にして渡すのが最短です。「次までに調べておきます」「次はこの順番でやってみましょう」など。お願いではなく予定を渡すと、次回の理由になります。
Q. キャンペーン中は出勤を減らしたほうがいいですか?
A. 逆です。期間中はフリーの来店が増えるため、店内の稼働そのものは上がります。減らすべきなのは出勤ではなく、当日まで空けておく枠です。指名で埋めたい時間は前日までに告知してしまってください。
Q. 割引が終わったあと、先送りしていた本指名さんは自然に戻りますか?
A. 多くは戻りますが、全員ではありません。**間隔が普段の1.5倍を超えたあたりから、戻らない人が出ます。**期間終了後の1〜2週間で、間隔が伸びている方に個別に声をかけるのが回収の分かれ目です。
まとめ
フリー限定割引は、指名料を「サービスの対価」から「割引を受け取らないための差額」に見せ替える施策です。奪われているのは売上ではなく、指名する理由です。
- 影響は3層に分かれる。①新規は増え、②迷っていた人が流れ、③本指名さんは来店を後ろにずらす
- 「本指名が減った」の正体は、多くの場合指名替えではなく先送り。処方が変わる
- **値引きで対抗しない。**出どころが自分の取り分で、参照価格が書き換わり、終わり方が難しくなる
- 前に出すのは価格ではなく確実性(時間を先に取れる・前回の続きがある)
- 告知ではお店の割引を否定しない。「指名だと、これができます」だけを足す
- 期間中は**暇にならない。**フリーで待機が埋まるので、指名の枠を先に押さえないと受けられなくなる
- キャンペーン発表の時点で出勤を確定し、期間中に来そうな本指名さんへ先に声をかける
- フリーで来た人の回収窓口は割引が終わる前の1回。渡すのは「お願い」ではなく「続き」
- 効果は本数ではなく来店間隔で測る。先送りは本数に出ない
まずは、いつも来てくださっている方の前回の来店日を書き出してみてください。そこから普段の間隔を足した日がキャンペーン期間に入っている人が、いちばん先に声をかけるべき相手です。
姫予約の基本的な考え方は姫予約とは、予約管理の全体像は姫予約の管理方法、指名種別の整理は本指名・初回指名・フリーの違いと管理、本指名そのものの増やし方は本指名を増やす方法にまとめています。お客様へ送る文面のバリエーションは姫予約のお客様向け例文集が参考になります。
P-Book なら、予約が指名種別ごとにお客様とひもづいて残るので、**キャンペーン期間の前後で「誰の来店間隔が伸びたか」を数え直さずに確認できます。**出勤枠と入っている予約が同じタイムラインに並ぶため、**フリーで埋まる前に押さえておきたい時間も一目で分かります。**無料で1ヶ月試せます。カード登録不要です。
P-Book は姫予約の管理をタイムラインで視覚的に行える予約管理アプリです。1ヶ月無料・カード不要で試せます。